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大学入試の模擬試験作問とモニター、そして、定期考査の作問

2023-06-12

Hi. 元経営者で現役高校教員のトライリンガルOkadaです。

教員となりましたが、経営者時代からしていた模擬試験の作問者は引き続き行っています。そして、新しくモニターの仕事もするようになりました。

どういった仕事なのか、過去の経験も含めて、少し紹介してみたいと思います。

5月に、モニターとして、ある難関国立大の夏実施の模擬試験を解きました。現在高校で扱っている教材はどれもとても易しいですし、レッスンの狙いはいかに言語活動をさせるかに主眼をおいているため、難関大の大学入試問題に対応する能力がなまっているんじゃないか、と不安に思っていたのですが、それほどでもなかったことにびっくりしました。そんなお話も後述します。

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駆け出しの頃:採点者からのスタート

模擬試験に絡んだ初めての仕事は20代の頃の「採点者」の仕事です。

実はさらにその前段階もあります。

駆け出しの頃、大学受験予備校河合塾での英語講師時代に、ベテランの人気講師の特定大対策講座の確認テストの採点業務が私にとってのスタートです。この確認テストは高校のようなB5 1枚というものではなく、レッスンの内容を応用させたもので、全校舎統一された模擬試験のような冊子+解答用紙でできた本格的なものでした。

自分自身のレッスンの合間をぬって、これらの採点をする。

その後に、全国の受験生や高校生が受験する模擬試験の採点者の仕事をするようになりました。

採点者の仕事

単価

私が依頼を受けて実際にしてきた採点業務の1枚あたりの単価はものによって変動していて、およそ1枚100-300円台の幅で推移していました。

採点をしながら、今これで130円かあ〜、とか、今 X枚 できたから時給換算するとXX円かあ〜、というのが若い頃の自分の思考パターンでした。

コストパフォーマンスはよくなく、期限もなかなか厳しかったが...

20代の頃はとにかく作問よりも採点依頼が多かったです。

期限も短いし、枚数も100毎単位で増加するし、なかなか時間を確保できないし、採点にまつわる思い出はつらいことのほうが多かったですが、そこで記述解答を評価する目が養われた、と自信を持って言えます。あれだけのアウトプット量をかせげば、相当に添削力が上がります。

今もはっきりと覚えているのですが、家族で海外旅行に行く時の機内で採点をしていたこともあります。答案の私への受け渡しが予定よりも遅れて、わずか1週間後というデッドライン。ちょうど海外旅行を5日間予定していたタイミング。なんとしても現地での採点地獄は避けたい!ということで、狭い座席で眠っている家族を横目に黙々と採点。機内から出るタイミングでCAの方に「お疲れ様です」という一言とお菓子をもらったのですが、本当に思い出深いです。その時は苦しくてしょうがなかったのですが、振り返ってみると、そういった思い出の方が振り返ると酒の肴になりますね。

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模擬試験の問題作成(作問)

作問者になるには

業務委託させていただく大学受験予備校や業者によって、コンペ形式で模擬試験の作問担当の合否が決まるところ、ある程度の実力を評価していただき担当を割り振ってくださるところ、場所によって形式は変わりました。

私のスタートはコンペ形式。「英語科の講師は、〇〇月の〇〇大オープンの第1問から第3問を作成して提出してください」とお達しがあり、期限までに提出という流れでした。当時、講師専用の自習室があったのですが、そちらにこもって作った思い出があります。

採用されていくと、徐々に信頼を勝ち得ていき、コンペはなく「岡田さんは〇〇の模試の第1問から第4問を作成してください」といった形での依頼に変化していったのが、20代後半から30代でした。

現在も予備校や各業者はたまに作問者を募集しています。外部からも応募の場合は、採用となった場合、コンペよりも、割当が決定された状態での採用となるところが多いです。

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単価

単価は依頼されるものによって異なります。そしておそらくその人の経験値によっても変動します。

コンペ形式で落選しても、作問代、そして、書籍代(=文献使用料)も支払われました。採用されない悔しさ、それでも、労働への対価は支払われる、という矛盾に20代の自分は困惑した気持ちでした。

私の場合、文献使用料も含めて、大問1つで、20,000円〜50,000円代でした。

作問の流れ

実施時期の半年以上前には依頼があり、依頼があったら次のようなステップが踏まれます。

  • 素材選定をしてバッティングチェックをしてもらう
    私の場合は、リアルな書籍ではなく、ほとんど英語ニュースを使用していました。実際の大学入試の出典となる定番のニュースサイトがあります。例えば、センター試験時代であれば、Pew Research Center。これはチャートが関わる問題で大変お世話になりました。また、10年以上かけて自分にとっては確固たる参考ニュースサイトが10程度に絞られていったので、その中から1日1つ記事を読む、というのをルーティンにして、使えそうなものがあったら、EXCELに入力してストックしていました。
  • 素材がOKになったら作問開始
    重複がなければ、作問開始。解説や日本語訳、学習対策まで。
  • 1回目の期限に提出し、検討を受ける
    まず最初の締切に提出して数週間で検討者の方々からのフィードバックを受けます。修正提案ですね。
  • 検討者が納得いくまで、作問者-検討者 間ですりあわせていく
    この時期に初稿の印刷がされ、校正面も同時に見られ、第2稿, 第3稿...のように進みます。
  • モニター
    最終的にモニターに問題を解いてもらいます。
  • 微調整して最終稿

作問の基礎

初めて模試に携わった時は、選択肢の並びにルールがあることを知らないど素人でした。体系的にテストメイキングの方法を学んでからは、選択肢の中に共通項を作るとか、グループ化するとか、今では当たり前の方法でスムーズに選択肢を作れるようになりました。

共通テストが登場してからは、全国規模で開催される模擬試験の作問がコンペの場合、ほぼ採用していただけるようになるまでに成長しました。

モニター

先日、10年ぶりくらいにモニターの仕事をしました。

難関国公立大の模試問題を解いて、予想スコア、レベル評価、問題修正、解説修正をする、という仕事です。

単価は私がこれまで経験したものは、およそ¥10,000-¥20,000です。学生時代にもやったことはあるのですが、その頃は¥5,000-10,000くらいだったと思います。

4月より高校教員になって、言語活動を主体にしているため、落ち着いて長くて難しいパッセージを腰を据えて読む作業は仕事の中ではしていません。だから、どのくらい自分の頭が鈍っているかが心配だったんです。

実際に解いてみると、「100字」で書け的な記述問題は帳尻合わせに時間がかかりましたが、概ね力が落ちていませんでした。

朝の補修レッスンが始まる直前の毎日朝7:20-7:30にニュースサイトで2,3記事を読む、というのをルーティンにしています。万が一レッスンの準備ができていなくても、そこは優先順位をニュースサイトを上にしています。この時間は短時間で複数の記事を読みたいので、短く難しくないCBSを利用しています。このルーティンの効果が、力が訛っていなかったことの原因の1つだろうな、と分析しています。

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私が作問をする側の場合、モニターや検討する側から精巧な修正意見がたくさん送られてきます。こちらに落ち度がある場合はもちろん多いのですが、それよりも向こう側の検討の精度がいつも本当に高いんです。「ここは絶対的に自信がある」と事前に思っていた問題でも、別解の可能性や、学習指導要領の方向性とのズレなどあらゆる面で想像もしていなかった部分にコメントが入ります。なので、今回できるだけ多く建設的なコメントを記載して提出しました。

これが協同して仕事をすることの醍醐味だな、と痛感します。違った意見が存在して、それを共有しあって、お互いが納得する方向にすりあわせていく。20代前半の頃は意見が衝突すると思考停止することがたまにありましたが、今はむしろ異なった意見が出てきた時こそラッキー!と感じられます。自分の視野が一段と広がるチャンスだし、作品の精度がより高まりますからね。

最後に:問題作成者になることの利点、定期考査の作問

現在、生徒に復習テストを作成させる機会を設けています。

それが主体性の養成につながりますから。それだけじゃなく、「問題を作ってみたら、理解が深まった」「解き方のコツがわかってきた」「覚えがよくなった」という意見が出てきます。作成者側でありながら、一学習者としての利点も享受できるんですね。

さて、教員1年目。現在は模擬試験ではなく、定期考査の問題の最終調整に入りました。考査1か月前にドラフトを完成させてから、試験が近づくにつれて再調整していくというやり方を今のところとっているので、レッスンの進捗度を見つつ、削ったり、追加したりしている段階です。

模擬試験は大学の出題意図に寄せるように作問をするので過去問研究がものを言います。一方、定期考査は、学習指導要領の意図を反映させながら作る、というのがとてつもなく面白いです。知識・技能系、思考・判断・表現力系をベースに、対象となる全クラスの平均スコアも整うようにし、他クラス担当の先生方も納得していただけるテストを作る。

今の私の課題は、思考・判断・表現力問題をバランスよく配置しつつ、全体の難易度をいかに落とすか、です。自分の中で良問!と思って作問をすると、おそらく平均スコアは20-30くらいになってしまいます。これを高校の授業レベルに落とし込む。このあたりの感覚は、考査の作問経験を積むというアウトプット体験でしか養成できない、と思っているので、目標は今年度最後の3学期の定期考査で最高レベルの問題を作れるようになる、です。

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