(共通テスト(リーディング)第1日程問題・第1問A)
Hey guys, 代表Okadaです。TOEIC満点講師が共通テスト英語第1日程の出題意図、解き方、時間配分目安をご紹介します。
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まずは全体として一貫する基本的解き方から確認しましょう。
全パート共通の解き方
共通テストは全体として、
素早く設問に必要な情報をスキャンし、根拠箇所と選択肢の照合作業をする「情報処理能力」が求められます。しかも、「スピード」も要求されます。
よく「記述式だとできるけれど共通テストになると...」という国公立大志望者の方が多いですが、問われている能力が違うんですね。(上位レベル層は除いて)「素早く情報を処理をする」練習をしていなければ、当然たまに受験する模擬試験では負荷がかかりすぎて実力が発揮できないですから、高いスコアをとることはできないでしょう。
練習時間の確保はマストとして、プラス解き方を理解しておくことで効率が一気にあがります。
STEP1 本文の前にある英文を読んでシチュエーションの確認
冒頭に記載されている英文を見てざっくりと状況を確認しましょう。
STEP 2 タイトルがあればタイトルを先読み
グラフがあればグラフのタイトルを先読み
複数の記事の場合は両方のタイトルを先読み
広告・レシピ・イラスト・ポスター・スライド系は「太」「でかい」「アンダーライン」「囲み」を先読み
STEP 3 設問を先読みし, キーワードの決定
作問者がよく残すキーワード
[1]固有名詞
[2]数や時(またはそれらに置き換えができるもの 例. young, oldなど)
[3]価値判断(=訳したら何らかの評価をしている表現)
+
上記以外の場合
[4]動詞
[5]名詞
をキーワードにしてみる。動詞、名詞をキーワードにする際は[1]〜[3]がない場合に考えてください。理由はパラフレーズが多く設定されることが多いためです。(そして、これは難しいですが、1つのセンテンスの中では、トピック提示が主語におかれ、動詞の後ろの目的語(または補語)に新情報がおかれる傾向が高いんです。主語も目的語も名詞です。また、動詞を中心にして前後で情報価値が変わります。ですから、動詞と名詞をキーワードにすると該当する表現のパラフレーズがパッセージに登場するケースが多いわけです。ちょっとむずかしい視点ですね。)
STEP 4 キーワード検索
関係ないところは速読 ➔ キーワードが登場したらスピードを落とし精読
STEP 5 迷ったらパラフレーズを丹念に検証
答えの選択肢は解答の根拠となる箇所の【パラフレーズ】がされます。パラフレーズが多いほど正解の可能性が高く、本文そのままだと少し「怪しい」なくらいの気持ちを持ってもよいでしょう。
パラフレーズのパターン
作成者が選択肢を作る際に行うパラフレーズは主に5パターンあります。私自身、模擬試験作成者として年間に10本程度の問題を作成し納品しています。その際にも以下の①〜③をメインにして作成します。
① 類似表現へ変換
② 品詞変換
③ 部分[具体]→全体[抽象]
④ 構造変換 (例)能動→受動へ 受動→能動へ
⑤ 肯定と否定の入れ替え(反対語を否定)
パラフレーズ実例
実際に出題されたパラフレーズ例を考えてみましょう。
本文 | 選択肢 | パターン |
business | 類似表現 | |
successful | 品詞変換 | |
at break time | 類似表現 | |
traditional dance traditional food traditional clothing | 部分[具体]と全体[抽象] | |
outside | 肯定と否定の入替 |
Answer
company
success / succeed
between classes
culture
inside
解き方の実例(試行調査問題より)
実際の手の動かし方の例はこちらを参照してください。シンプルにヴィジュアル化されていて分かりやすいでしょう。
共通テストの出題内容
2021年第1日程ではどのような出題だったか確認してみましょう。
共通テスト全体像
大問 | 小問 | 配点
(大問) | 配点 (小問) | 配点
(1問) | 内容 |
1 | A | 10 | 4 | 2 | A. スマホメッセージのやりとり
B. ウェブサイトの情報(表含む) *試行調査:広告・告知関係メモ関係 |
B | 6 | ||||
2 | A | 20 | 10 | 2 | A.表・コメント・総評【事実と意見の識別】
B.オンラインフォーラム【事実と意見の識別】 *試行調査:短めの記事・レシピ |
B | 10 | ||||
3 | A | 10 | 6 | 3 | A.旅行ウェブサイト(イラストを含む)
B.学校新聞 *試行調査:短い物語(ブログや記事等体験談系) |
B | 9 | ||||
4 | ― | 16 | ― | 2or3 | 時刻表やグラフを伴うメールのやりとり
*試行調査:複数の記事・図表/グラフ【ポスターまとめ】 |
5 | ― | 15 | ― | 3 | 物語系
*試行調査:伝記【著名人の生涯】 |
6 | A | 24 | 12 | 3 | 社会性の高い記事【評論文】
A:ポスター穴埋め B: 評論文(甘味料に関する論説) |
B | 12 |
2021第1日程に基づく時間配分例
得意不得意に大きく左右されるところですが、後述する「語数」、そして、設問数、難易度を考慮すると、概ね次のような時間配分がオススメです。
時間配分例(見直し4分の設定)
大問 | 小問 | 配点
(大問) | 配点 (小問) | 配点
(1問) | 時間配分目安(分) | 負荷をかけた場合の
時間 |
1 | A | 10 | 4 | 2 | 8 (4+4) | 7-6 |
B | 6 | |||||
2 | A | 20 | 10 | 2 | 13
(6+7) | 11 |
B | 10 | |||||
3 | A | 10 | 6 | 3 | 12
(5+7) | 11-10 |
B | 9 | |||||
4 | ― | 16 | ― | 2or3 | 12 | 9 |
5 | ― | 15 | ― | 3 | 13 | 11 |
6 | A | 24 | 12 | 3 | 18
(9+9) | 16 |
B | 12 |
*得意・不得意により人によって時間配分は変わりますのであくまでも参考に。第4問が苦手な人はそこを多めに。逆に第6問の評論文はロジック(論理)が得意な人にとっては速読できる箇所が多いため, スキャニング問題としての性質が強いですから、18分もいらないという場合もあるでしょう。
*上記や様々なアドバイスを参考にして自分オリジナルの時間配分を決定しましょう。
*解く順番:人それぞれ戦略や相性があります。集中力が高いうちに, ポイントの大きい第5問〜が相性が良い人もいれば, 英検準2級レベルの易しめ第1~3問で頭を働かせてから, 後半で勝負するという手もあるでしょう。作成側の意図としては, 受験生側のパフォーマンスを配慮してセンター試験と同様階段上にレベルが上がるように作問されています。
2021第1日程の語数一覧と黙読・音読目標時間
第1日程での語数は次のようになっています。
大問 | 小問 | 配点 (小問) | 語数
(本文) | 語数
(設問・選択肢) | 黙読
目安 | 音読
目安 |
1 | A | 4 | 142 | 51 | 43s | 53s |
B | 6 | 237 | 76 | 1m11s | 1m29s | |
2 | A | 10 | 207 | 207 | 1m02 | 1m18 |
B | 10 | 206 | 160 | 1m02 | 1m18 | |
3 | A | 6 | 251 | 66 | 1m15s | 1m34s |
B | 9 | 299 | 120 | 1m30s | 1m48s | |
4 | ― | 16 | 435 | 195 | 2m11s | 2m43s |
5 | ― | 15 | 615 | 314 | 3m05s | 3m51s |
6 | A | 12 | 506 | 243 | 2m32s | 3m10s |
B | 12 | 667 | 260 | 3m20s | 4m10s |
音読でしめる(WPMによる目標時間を意識して)
問題を解いて解説を読み/受け、腑に落ちたら、期間を空けて、曖昧だった問題、間違えた問題を中心に解き直します。根拠を持ってよどみなく解けるようになったら、最後の締めとして「音読」がオススメです。
上記の表は「設問・選択肢は除いて、本文だけを読む」とした場合の「黙読」「音読」の目標時間を記載しています。
WPMという指標に基づいて、音読はWPM160、黙読はWPM200で計算しています。
第6問Bなら、667語ありますから、本文を黙読した場合の目安は3m20s、音読なら4m10sです。この目安をクリアできるのであれば、速読マスターと言えるでしょう。逆に、音読が6m10sかかってしまったとしたら、それは速読力に問題がありますから、問題を解くという練習に加えて、本文を素早く読めるようになるための練習が不可欠です。
音読の効果的な方法
こちらが参考になるでしょう。音読の基礎から応用まで細かくまとめられています。
各大問の出題意図一覧
それでは各大問ごとの出題意図を確認していきましょう。出題者が何をさせたいのかを理解しておくことは、問題を解くための効率をあげてくれます。
第1問 スマホメッセージのやりとり、ウェブサイトの情報
A
問1 スキャニング … 設問のキーワードを検索 問2 メッセージのやりとりの続きを推測する ▶第1日程:選択肢が+−に分類できる B 問1 スキャニング … 設問のキーワードを検索 問2 スキャニング … 設問のキーワードを検索 ▶第1日程では表の中身を検索 問3 スキャニング … 設問のキーワードを検索
試行調査問題では 主旨/タイトル選択問題(purpose)も出題されています。 → タイトルと最上部のブロックをメインの根拠にする |
第2問 表・コメント・総評の読み取り、オンラインフォーラム
A 学園祭のバンド大会のスコア表、審査員コメント、総評
問1 スキャニング … 設問のキーワードを検索 ▶第1日程では表の中身を検索 →設問のキーワードは表の上部の項目とパラフレーズが起きている 問2 スキャニング … 設問のキーワードを検索 ▶第1日程では+−両方のコメントを述べる人を選ぶ →+−、感情など主観的な言い回し、逆接・対比DMに注目する 問3 事実(fact)と意見(opinion)の識別 問4 事実(fact)と意見(opinion)の識別 問5 スキャニング … 設問のキーワードを検索 ▶第1日程では表と総評の2箇所で根拠を見出す横断問題(=2箇所にまたがる問題)
B オンラインフォーラム 問1 主観文検索 S think … ( )の設問。 問2 事実(fact)と意見(opinion)の識別 問3 スキャニング … 設問のキーワードを検索 問4 事実(fact)と意見(opinion)の識別 問5 推測問題 …「〇〇に反対する(oppose)のに助けとなるように何を調査するだろうか」という問。出題の意図は、主観文の特定をすること。つまり、問5は主観文(主張文)検索。その上で、反対するためのアイデアが見いだせる。 |
第3問 イラストを含むウェブサイト、学校新聞(記事)
A
問1 リード文にキーワードのない内容一致 ▶1つ1つ選択肢を検証する問題 問2 計算問題 ▶リード文の情報を本文とイラストからスキャニングし数字の計算をする B 問1 出来事の順番の並べ替え ▶時系列を示す表現に印をつけながらリーディング。選択肢吟味の際はV時制に注意。 問2 スキャニング … 設問のキーワードを検索 問3 スキャニング … 設問のキーワードを検索 |
第4問 時刻表やグラフを伴うメールのやりとり
問1 本文+表 からリード文のキーワードをスキャニング
問2 ドラフトの穴埋め …スケジュールを時系列順に並べる。本文と表両方を利用する。 問3 スキャニング … 設問のキーワードを検索 ▶2つのパッセージに根拠がまたがる横断問題 問4 スキャニング … 設問のキーワードを検索 問5 スキャニング … 設問のキーワードを検索 |
第5問 物語系
プレゼンテーション用のスライドを埋めていく形式。
全問共通 キーワードはスライドにあるため、問のリード文は読む必要がなかった ▶試行調査問題も同様でした
問1 タイトル選択 問2 主要な登場人物、脇役の選択 問3 出来事の順番 …スケジュールを時系列順に並べる。 ▶時系列を示す表現に印をつけながらリーディング。 問4 スキャニング 問5 スキャニング |
第6問 社会的話題に関する長文【論説】
AB共通
設問がパラグラフの順番と連動する可能性が高い大問
A 設問はすべてポスターの穴埋め➔ポスターにキーワードを見出す ▶第5問と同じ考え方 ▶試行調査問題では第5問で出題された形式でした
問1・2・3 スキャニング 問4 Summaryの穴埋め … 本文全体の内容が理解できていれば, 消去法で簡単に消せる。迷った場合は一般的なタイトル選択問題と同じ解き方でせめてください。なお、センター試験時代からタイトル選択問題は本文に何度も登場する表現を選択肢に入れるというのが定番になっています(英語の性質である結束性を活用した作問になっているためです)。 B 問1 スキャニング … 設問のキーワードを検索 問2 表の穴埋め(本文からスキャニング) … 本文ではなく問いに示された表を埋める。簡単な計算を伴う。 問3 内容一致問題 …リード文のない内容一致問題で2つの正解を選ぶ。 *第6問は本文と問の順番が連動しますが,この問だけは順番が前後していました 問4 筆者の立場を選ぶ …実質「筆者の主張」を読み取る問題。 |
主旨選択問題(タイトル選択)の解き方
パッセージの素材によって注目すべき箇所が変わることを知っておきましょう。
Ⅰ. グラフ・図表
① グラフ・図表のタイトル確認 ② 第1パラグラフで全体テーマを検索 ↓ 判断できない場合 ③ 本文全体で反復されている表現の検索 *反復 = 同じ表現, 類似表現, 同じ構造の文
Ⅱ. 物語系 ①本文の結末付近にある教訓・学び = タイトル ↓ 判断できない場合 ②本文の結末付近にある感情表現が含まれる文に注目 ③本文全体で反復されている表現の検索
Ⅲ. 論説 ① Introductionパラグラフの最終文付近とConclusionパラグラフの最初・最後 ↓ 判断できない場合 ② 本文全体で反復されている表現の検索 <誤りの選択肢の典型> 一部のパラグラフ(特にMain Body[最初と最後のパラグラフ以外をMain Body Paragraphという]部分の1パラグラフ分)にしか書かれていない内容が盛り込まれている選択肢は誤りと判断できる。
Ⅳ. 広告・レシピ 冒頭のブロック |
意見(opinion)vs. 事実(fact)
opinion
基本的に主観文。
試行調査問題、2020年第1、2日程では、一覧の「逆接、譲歩Discourse Marker」「助動詞」「S is 形容詞」「主観形容詞・副詞・名詞」「主張表明」「Now」が頻出の標識でした。特に、何からの評価を下している形容詞(価値判断の形容詞)は主観形容詞と呼ばれ根拠に絡みます。また、「感情・主観」をアピールする助動詞の中でも、should, must, will, wouldは別格で主観度が強い。
▶ただし、共通テストでの“opinion”は「主張」という意味合いに加えて、「誰かが言ったこと(=発言)」も文字通り含まれるので注意してください。
fact
基本的に客観文。
試行調査問題、2020年第1、2日程では数字を絡めてくる問題が頻出でした。また、factを求める選択肢に「主観形容詞」が入っていて本文の確認をするまでもなく削除できる設定もあります。逆にopinionに数が入って削除できるケースも頻出でした。
解法データダウンロードはこちら
過去問は大学入試センターよりダウンロードできる
(https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/kakomondai.html)
第1日程の問題
ダウンロード:2021 common test reading [1]
リスニングの解き方
リスニングの解き方が気になる方はこちらをご参考ください。
最後に
共通テストは「素早い情報処理力」が求められます。このスキルは日頃から長い分量の英文をタイムプレッシャーとともに読み、解く練習が必須です。日頃の学習に必ず取り入れるようにしてください。
まずは、過去問として共通テスト第1日程、第2日程。試行調査問題第1回、2回。
次に、形式は異なりますが、最もオススメの教材はセンター試験過去問です。受験生に言わせてみれば、「形式違うじゃん、やる意味あるの?」という思いがよぎると思いますが、教える側、問題作成者側の視点から見ると「センター試験最高!」です。本文と選択肢の照合作業も速読もあらゆる面でオススメです。リスニングも同様です。
直前期は仕上げとして各業者から販売されている予想問題集でしめるとよいですね。