科学☓学習

目標宣言の効果【宣言の仕方で効果のあるなしが決まる】

https://www.dsrconsulting.co.za/2020/07/15/achieve-your-goals-by-setting-smartway-objectives/

Hey guys. 超朝型のOkadaです。

World Cup熱戦ですね。たとえ早朝にあろうと私の中では習慣化された時間帯なので全く苦でありません。サッカー、フットサルの経験者なので、応援に熱が入りますし、代表戦を通じて、日本人が一つになっている姿を見ると、日本というアイデンティの重要性、グループに帰属していることが大きな力、一体感、そして平和へとつながっている気がします。学生時代、学校に属していることがあまり好きじゃなかったですが、こういった帰属意識からもたらされる力があそこにはあったんだな、と改めて実感します。

さて、代表堂安選手。

「オレしかいない(オレが決める)」「ゴールのイメージができている」

ドイツ戦の前も、スペイン戦の前も、宣言していました。国民によっては「ビッグマウスだ」と否定的に捉えることもあるでしょうし、賛成派も結果が出ないと、一気に批判に走ってしまうのがやはりビックマウスという存在だと思いますが、科学的には目標宣言には多くの効果が期待されています。

目標宣言の効果【Declarative Effect】

認知心理学の分野では、Declarative Effect「宣伝効果」と呼ばれる目標宣言の効用。一般的にはPublic Commitmentと言われたりします。日本では新年の抱負を書き初めする、というのが一番身近なところですが、どんな効果があるのでしょうか?

目標到達への空気感(周りのサポート)

目標を宣言することで、まず周りの空気感が変わります。1人モチベーションの高い人物がいると、周りに伝染します(=ミラーニューロン効果)。また、周り、例えば、家族からのサポートを受けやすくなります。

強制的力を働かせる(プレッシャーが集中力を生む)

宣言をすることで嫌でも達成せざるを得ない状況になります。プレッシャーがかかる。だから、集中力が高まり、当然、モチベーション自体をあげるのに役立ちます。

高いモチベーションを維持できる

上述した通りで、宣言をすることでやる気を高めることができます。脳内では、目標を宣言することで、その目標が頭の中で実現するという錯覚が起きます。それにより、やる気物質が分泌されます(ただし、後述しますが、この錯覚現象によって逆に気持ちが満足してしまい、モチベーションが無意識のうちに下がってしまう、という実験結果も出ています。諸刃の剣なんですね。)

目標宣言が逆効果になることがある【Derek SiversのTED TALK】

アメリカの起業家Derek Siversさんが「目標宣言」に関するこれまでの実験を引き合いに出して「目標は宣言しないほうがいい」というスピーチをして一躍有名になったTED TALKのプレゼンです。心にとどめておいたほうがいい、という結論に達したんですね。

上述した通り、目標を宣言することで脳内メカニズムは、「私たちが目標を言う」=「脳内では達成した」という錯覚現象が起きる。それで満足してしまい、努力をしなくなってしまうんですね。

例えば、「この夏ボランティアに私参加します」と宣言すると、実際にはまだ未実現なのに、やった気分になったり、実施前から報酬を得たいという気分になってしまう。自分へのご褒美としてショッピングに行ってしまう。そういった傾向が高いんです。

OKADA

私個人の感覚ですが、目標はがんがん宣言していいんじゃないかと思っています。ただし、性格タイプによってはきれいなまでにはまらないというケースもあるでしょう。私の性格がクライマー型(山登り型 )だからうまくいっているのかもしれません。波がなくコツコツできるんですね。逆にサーファー型(波乗り型)の場合、気分の上がり下がりの波がありますから、満足感に浸り努力しなくなるという感覚も理解できます。いずれにせよ、周りを巻きこむ仕組みを自分でつくるのが重要です。自分一人でのモチベーション維持は難しい。周りの協力を得ることで持続できる。目標の宣言でその一つのツールなんですよね。

このプレゼンを初めて聞いてからは、それまで学生には目標宣言を推奨しまくっていたのですが、一時期進めなかった時期があります。言うのではなく手帳などに書こう!とアドバイスの仕方を変えたんです。

ところが、2019年にOhio State Universityで行われた実験によって新たな研究結果がでました。

目標宣言の仕方で肯定的に作用【Ohio State University】

オハイオ州立大の学生を対象に目標宣言の効果を実験したところ、自分の尊敬する人への宣言であれば効果が発揮され、そうでなければ、努力を怠る傾向があることが分かりました。このことから、目標宣言はちゃんと行えば、肯定的に効果を発揮してくれるんですね。

目標宣言のポイント1:尊敬する人に宣言する

自分にとって大切な人、この人からの信用は失いたくない、という人に宣言をすることが重要です。SNSで宣言をする際も、見る側にそういったタイプの人が煎ることが大切なんです。

目標宣言のポイント2:具体的に宣言にする

目標がぼやっとしているほど錯覚現象による反動が大きくなります。ですから、目標は具体的に。数値が出せるのであれば、数値化しましょう。

目標宣言のポイント3:短期目標にする

ポイント2と重複しますが、現在地から離れるほど、目標は抽象化しやすくなります。また、私たちの脳の性質は「目先の利益を優先する」「未来のことに当事者意識が働きにくく、過大評価してしまう」ということが研究によってわかっています。

OKADA

この2点は大学入試の過去問題で何度なく遭遇したトピックです。特に「目先の〜」は色々な大学が出題していて、読む度になるほど〜となりました。「過大評価」については、BTSのダンスを使ったYale大学の実験が有名ですし、「楽観主義」をネタにした長文も大学入試でよく登場します。

以上3点は目標宣言時に意識することで、目標を宣言する効果が最大限発揮される。それが今最新の研究によってわかっていることです。

もともと2009年くらいに茂木健一郎さんの「脳科学」の本を読んで「目標宣言」の効果を脳メカニズムとして理解していたのですが、その後のTED TALKを見て「あれ茂木さん違ってたの?」ってずっとなっていたんです。でも自分の経験の中では宣言したほうがかなっていることのほうが多いので、もやもやしていたんです。2019年の論文を読んでから、受講生にはどんどん目標宣言しよう!とオススメしていますし、スポーツ選手が「オレが点取る」というのを観ると本当に気分がよくなります。

OKADA

「有言実行」は英語で?

「有言実行」

ついでに英語スクールとして、「有言実行」の言い方を整理しておきましょう。

「彼女は有言実行するよね」

1 She is a woman of her word.
2 She does what she says (she will do).
3 She walks the walk instead of talking the talk.

[解説]
1 : one's word「約束、(約束としての)言葉」。「彼女は言葉通りの女性だ」といった感じ。
2:「彼女は(すると)言うことはする」
3: talk the talk「口先ばっかり」、walk the walk「有言実行する」です。ちなみに、walk the talkも「有言実行する」

BTSのヒット曲に登場するtalk the talk

1 Dynamite

Word up, talk the talk, just move like we off the wall

・Word up「そのとおり」
・off the wall「風変わりな、ばかけだ」


2 Permission to Love

"Don't need to talk the talk, just walk the walk tonight ..." 

・こちらは本来の意味とは違いますが、talk the talkとwalk the walkは一緒に使われることの多い表現なのです。

最後に:宣言することで自分を変える

私自身、できないかな〜と内心思っていることでも「私できますよ。余裕です。」と宣言することがあります。感覚としては、そうすることで実現可能性が低かったものが一気に可能性高まる、という体感があります。今年とてもよく宣言したのが「次の第2回英検1級ではフルスコアをとるから」です。実際にはまだ達成できていないのですが、言った手前それに見合った努力はしました。受講生には実際のスコアも配布したくらい、プレッシャーをかけました。

堂安選手や長友選手を見ていて、「宣言する」ってほんとうに大きな力があるんだなっと理屈抜きで痛感しました。今朝の試合(スペインx日本)でも、「オレが」と宣言していた「堂安選手」が交代してすぐに点とりました。長友選手は「スペインに勝っているイメージが頭に浮かんでいる」と言ってましたが、勝利後のインタビューでも「今見ている光景がイメージしていたもの」って語っていました。

スポーツ選手にとって、敵は自分自身、特にメンタルとの戦いですね。言葉一つで自分をコントロールする姿かっこいいなって思います。

上述したとおり、宣言は諸刃の剣ではあるものの、人を動かす神秘な力が宿っていると改めて感じました。

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