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以前より本Websiteで音読やディクテーションの方法や効果をお伝えしてきました。そしてこれらを実践していない学習はもはや英語学習ではないということも科学的根拠とともに解説をしてきました。
各国で発表されている最新の音声学習研究を見ながら, そして, 教え手として中学生〜社会人までにレッスンを提供している経験から, 私自身も日々方法の精度を高めています。そこで最新の効果が実感できる最強の音読手順をご紹介します。
メモ
高3生や大学受験生には「3. 音読の手順【中級〜上級】」の方法がオススメです。WPMの指標があればよりモチベーションを維持しやすくなりますので, 「0. 下準備」と「1. 音読の大前提」を確認した後に, 3にスキップするとよいでしょう。WPMについては0. に色々書いてありますが, 音読は160, 黙読は 200WPMを目指すとよいでしょう。数値計算が面倒くさい場合は, 音読をする際は共通テストリスニングの1.2(~1.5)倍くらいのスピードで読んでも内容も構造もスッとはいってくることを目指してください。自ずと黙読スピードも上がります。
0. 下準備 -WPMで現状を知る
WPMとは
WPMはWords Per Minuteのことで, 分速何語話せるor読めるのか, つまり, 1分間に話せるor読める語数のことです。
WPMを速読の指標へ
このWPMは「話す」と「読む」におけるスピードを客観的に把握ができます。学習効果を高めるためには, 現状と理想のギャップを把握することが必要ですので, 1つの指標にしましょう。
音読はまずWPM120, その後, 160へ
音読をする際には, まずは, 口調がゆっくりとした人の日常会話スピードである120を目指します。次に, 口調が早めの人の日常会話スピード, TOEICリスニングPARTのスピードである160を。さらにレベルUPを図りたい方は最終目標として200を目指しましょう。200を自力でできるようになればニュースと同等のスピードを体感できます。つまり, ニュース視聴に対応できる土台が出来上がります。日本人高校生は100~120WPM程度というデータがあります(が実際には最も遅いでしょう)。以下(write-out.comより)を参考にしましょう。
「話す」のWPM指標
- プレゼン・スピーチ:100〜150
- 英語圏の人々の会話(遅い人):120〜150
- Audiobooksのナレーション:150〜160
ラジオのホストやポッドキャスター
TOEICリスニングPART - 英語圏の人々の会話(早い人):160〜200
ニュースキャスター:200 - オークショナー:250~400
- 世界チャンピオン:655
WPMの算出方法(音読)
Step 5 以下の目標は最終目標の200WPMを想定しています。ギャップが大きすぎる場合は160設定にしましょう。
Step 1. 音読する素材の準備(音声あり推奨)
(出典:英検準1級教本(旺文社))
↓
Step 2. 英文の語数を数える
例. 85 words
↓
Step 3. 時間を計って音読する(スマホ等で録音推奨*)
例. 36秒かかった
*練習後の成果を確かめるためのbefore x after のbeforeになります。音読すると決めたものは練習なしの段階で一度録音することで, 成果をより実感できるようになります。
↓
Step 4. 語数÷時間[秒数] ✕60
例. 85÷36 ✕60 = 145WPM 「英語圏の人々の会話(遅い人)レベルかあ」
↓
Step 5. 現実と理想のギャップを時間数で確認
理想の時間[秒数] = 語数÷200 ✕60
例. 85÷200 ✕60 = (85語を)25.5秒(で読めばOK)
→「理想:25.5秒 現実:36秒 で約10秒の差があるな」
↓
Step 6. 理想を目指して練習スタート
例. 10秒短縮を目指す
*Step 3は必ずしも意味内容が頭に入ってくる必要はありません。つまり, (練習後の最終形はダメですが)音だけ発しているという状態でもOKです。初期状態を知ることが目的ですので, 練習しながら, 音読しても内容が頭に入ってくるように訓練をしていけばOKです。ただし, 目標WPMは意味内容理解ありのスピードですので, 厳密にレベル把握をしたい場合は, 極力内容把握しながら音読をしましょう。
黙読はまずWPM200, その後, 250をゴールへ
黙読のWPM指標は以下(Forbesより)です。まずは200WPMを目指しましょう。TOEIC Readingセクションを解き終える場合は最低150WPM, 余裕をもって200WPMが必要とされているからです。ちなみに, 大学入試の私立難関大は時間内に解き終えるのに150WPMは必要とされています。
次に, 中2の250WPMを。ネイティブスピーカーと同等を目指したい人はさらに上を目指し成人平均300WPMを目指しましょう。 なお, 日本人高校生は75, 大学生は80~100WPM程度とされています。
「読む」のWPM指標
小3:150
中2:250
成人平均:300
大学生平均:450
大学教授:675
速読の世界チャンピオン:4,700
WPMの算出方法(黙読)
読解スピードをあげるためには黙読の数値も必須ですね。Step5 以下は250WPMを目標と想定しておきます。
WPMの算出方法は次のようにしましょう。
Step 1. 音読した素材を利用
(出典:英検準1級教本(旺文社))
↓
Step 2. 英文の語数再確認
例. 85 words
↓
Step 3. 時間を計って黙読する
例. 25秒かかった
↓
Step 4. 語数÷時間[秒数] ✕60
例. 85÷25 ✕60 = 204WPM
↓
Step 5. 現実と理想のギャップを確認
理想の時間[秒数] = 語数÷250 ✕60
例. 85÷250 ✕60 = (85語は)20.4秒(で読めばOK)
→ 理想:20. 4秒 現実:25秒
↓
Step 6. 理想を目指して練習スタート
例. 5秒の短縮を目指す
*Step3は音読と異なり, 意味内容が入ってくることをできる限り実感してください。文字面だけを追うのは読むということの意味を無視しており本末転倒です。
音読の大前提 -ただ声に出すはNG
音読の主要な目的は,
①速読
②無意識レベルの内容把握
③語彙力
④文構造把握力
ただ声に出すだけでは音声処理レベルは上がる一方で, 本来の主目的を達成することはできません。詳細は以前ご紹介した記事「音読・シャドーイングの効果・手順」をご参考ください。
音読の手順【初級者 or 発音・リスニングが苦手な中級者】
音源があることを前提とした手順をご紹介します(入手できない場合は, 使用素材の提供元(学校や先生など)に問い合わせてください。あるいは発音が曖昧な語は全て辞書でチェックしてください)。
Step 1 英文を読んでざっと内容理解
音読する素材を1度黙読して内容をざっと把握しましょう。
この時, 難しすぎると感じる場合は, 日本語訳を読んで内容を腑に落としてもOKです。
Step 2 音声の確認
意味のかたまり(句や節)〜 1文単位でポーズを置きながら, 黙読します(心のなかで音声は発します)。
Step 3 英文を単語・構造・内容面でがっつり理解
予備校や塾の基礎習得期の長文読解の授業をイメージして下さい。先生が日本語を使って, 単語の意味や文構造(SVとか修飾先とか), 内容面の解説をしてくれる授業です。これを自力で行います。必要に応じて日本語訳を参照しながら以下を確認します。
①内容
②文構造
③単語
④発音
↓
日本語訳で腑に落とす
文構造の確認例
単語や日本語の確認
*とは言え特に文構造を自力で考えるのは無理という場合も多いでしょう。その場合は使用教材に構文分析がついているものを選ぶとよいでしょう。
Step 4 音声を再確認
今度はポーズなしで音声を聞きながら黙読します(心の中では音読してます)。ここで一旦腑に落としましょう。
Step 5 音読本番
①Listen & Repeat
スクリプトを見ながら意味のかたまり(句や節)〜 1文単位で聞き, ポーズを置きながら, 音読をします。ものまねに徹してください。うまくいくまで何度も。
↓
②Parallel Reading
パラレルリーディングとはオーバーラッピングのことです。スクリプトを見ながら, 音声を流しつつ音に合わせて音読します。発音が異なれば, 音源の音が多く耳に聞こえてきます。ズレが有るかどうかの判断ができます。
↓
③通常の音読
スクリプトを見ながら音声なしで音読します。
↓
④ ③を20~30回こなす
1日にまとめてする必要はありません。その素材をものにするための必要回数だと考えればよいでしょう。何度も何度も音読をします。
ポイント1)
この時, 単に音読するだけだと途中で飽きてしまうことが多いので, 事前に設定したWPM目標を目指します。徐々に自分のスピードをあげていってください。毎回時間を測定する, というよりも10回目, 15回目など間隔を空けるとストレスがなく済みます。
ポイント2)
Read & Look Upも取り入れて負荷をかける。ものにしたい文は「その文の黙読」➔「顔を上げてスクリプトを見ずにその文を音読する」も取り入れましょう。かなりの負荷がかかりますが, この作業はアウトプットにあたるため定着度が圧倒的に高まります。
ポイント3)
また, 声を出す作業にならないように気をつけてください。主な目的は①速読 ②無意識レベルの内容把握 ③語彙力 ④文構造把握力 です。したがって, 音読と同時に意味理解は必須ですので, 常に内容が入ってきていること, 常に英文の構造が把握できていることを実感しながら行いましょう。
ポイント4)
慣れてきたら, 書き込みの一切ないものを使っての音読に切り替えてください。書き込みがあるものを使うとただのインプットになります。私たちの脳はアウトプットで定着をはかります。だから書いていないものを使うのが効果大なのです。
ポイント5)
スピードを上げると内容が入ってこないタイプの人はチャンク音読を取り入れましょう。
オススメのチャンク音読
チャンク音読とはスラッシュリーディングと呼ばれるものです。チャンク(chunk)とは「カタマリ」のことを言います。私たちは日本語を介在させて読解するため, 右から左へ戻る作業を大量にすると思います。特に中高や大学受験で求められる和訳問題はまさにこの作業が必要です。ただし, これがスピードを落としてしまう原因となっています。したがって, 意味のかたまりごとで切って頭に入力の作業を繰り返し, 左→右の処理を自動化できるようにする。これがチャンク音読です。音読に少し慣れてきたら徐々に取り入れていきましょう。1つの素材がチャンクで捉えられるようになったあとは通常の音読を戻してスピードも徐々に速くしてください。
チャンクの分け方に決まりはありません。かたまりごとで意味理解をしていくという主旨のものですので, 人それぞれ違います。しかし大凡の目安となる考え方があります。
①主語(S)のかたまり
②動詞(V)のかたまり
③形容詞のかたまり
④副詞のかたまり … 前置詞+名詞など
⑤<①②が短い場合>主語(S)+動詞(V)のかたまり
I pay for almost everything with my smartphone.
↓
I pay(SVのかたまり)
for almost everything(副詞のかたまり)
with my smartphone(副詞のかたまり)
他にも,
⑥to doの前後 … ①③④に該当
⑦接続詞の前
⑧挿入
⑨関係詞
⑩O(長い目的語)
⑪句読点の前
このようにある程度品詞の知識が必要になってきますので, 中学英語に一旦かえってみるとよいでしょう。
チャンク例
【解説】Nitrogen is「窒素は」both 「両方」one of the most common「1つ 最も一般的な」and 「で」… と英日の処理をかたまりごとに行い, 戻らない癖付けと意味理解を瞬時にする訓練を行うのがチャンク音読です。英語圏の人々は上記のようにかたまりごとに意味を把握しています。だからリスニングも聞いたままの順番で内容把握ができます。私を含めて通訳者はこのような練習を瞬発力を鍛えるために実践しており, サイト・トランスレーションと呼ばれています。sight「見て」→translation「翻訳」ということです。もちろん, 実際にスラッシュを引くことは一切なく, 頭の中で処理します。初心者の方はチャンクの識別トレーニングにもなりますので, なれるまでスラッシュはひいていきましょう。
【解説】Nitrogen is「窒素は」both 「両方」one of the most common「1つ 最も一般的な」and 「で」… と英日の処理をかたまりごとに行い, 戻らない癖付けと意味理解を瞬時にする訓練を行うのがチャンク音読です。英語圏の人々は上記のようにかたまりごとに意味を把握しています。だからリスニングも聞いたままの順番で内容把握ができます。私を含めて通訳者はこのような練習を瞬発力を鍛えるために実践しており, サイト・トランスレーションと呼ばれています。sight「見て」→translation「翻訳」ということです。もちろん, 実際にスラッシュを引くことは一切なく, 頭の中で処理します。初心者の方はチャンクの識別トレーニングにもなりますので, なれるまでスラッシュはひいていきましょう。
Step 6 黙読のWPM測定
最後に黙読でのスピードがどの程度上がっているか確認します。目標達成ができていない場合はさらに音読回数を稼ぎます。
音読の手順【中級者~上級者(音声がない場合)】
できるだけ音声があるものを選んでください。ただし実際には入手できない場合もありますので, 音声がないパターンをご紹介します。音声ありの場合は, 【初級者〜発音リスニングが苦手な人】向けの中からご自分のレベルに合わせて実践していきましょう。
音読は書き込みがないものを利用して行って下さい。
Step 1 英文を読んでざっと内容理解
1度黙読して内容をざっと把握しましょう。
この時, 難しすぎると感じる場合は, 日本語訳を読んで内容を腑に落としてもOKです。
*音声がある場合はこのあと音声の確認をする
Step 2 英文を単語・構造・内容面でがっつり理解
予備校や塾の基礎習得期の長文読解の授業をイメージして下さい。先生が日本語を使って, 単語の意味や文構造(SVとか修飾先とか), 内容面の解説をしてくれる授業です。これを自力で行います。必要に応じて日本語訳を参照しながら以下を確認します。
①内容
②文構造
③単語
④発音
↓
日本語訳で腑に落とす
文構造の確認例
単語や日本語の確認
*とは言え特に文構造を自力で考えるのは無理という場合も多いでしょう。その場合は使用教材に構文分析がついているものを選ぶとよいでしょう。
*音声がある場合はこのあと音声の確認をする
Step 3 書き込みなしに切り替え黙読
書き込みなしのものに切り替えて下さい。上から下までゆっくり黙読して, 内容・単語・構造・発音が分かるか確認します。これができていない状態での音読は効果が半減しますのできっちりと行いましょう。
Step 4 音読本番
20~30回こなす
1日にまとめてする必要はありません。その素材をものにするための必要回数だと考えればよいでしょう。何度も何度も音読をします。
ポイント1)
この時, 単に音読するだけだと途中で飽きてしまうことが多いので, 事前に設定したWPM目標を目指します。徐々に自分のスピードをあげていってください。毎回時間を測定する, というよりも10回目, 15回目など間隔を空けるとストレスがなく済みます。
ポイント2)
Read & Look Upも取り入れて負荷をかける。ものにしたい文は「その文の黙読」➔「顔を上げてスクリプトを見ずにその文を音読する」も取り入れましょう。かなりの負荷がかかりますが, この作業はアウトプットにあたるため定着度が圧倒的に高まります。
ポイント3)
また, 声を出す作業にならないように気をつけてください。主な目的は①速読 ②無意識レベルの内容把握 ③語彙力 ④文構造把握力 です。したがって, 音読と同時に意味理解は必須ですので, 常に内容が入ってきていること, 常に英文の構造が把握できていることを実感しながら行いましょう。
ポイント4)
スピードを上げると内容が入ってこないタイプの人はチャンク音読を取り入れましょう。詳しくは「音読の手順【初級者 or 発音・リスニングが苦手な中級者】」をご覧ください。
Step 5 黙読のWPM測定
最後に黙読でのスピードがどの程度上がっているか確認します。目標達成ができていない場合はさらに音読回数を稼ぎます。
音読実例
音読の実例はコチラへ:
必ず記録を取る
実施した音読は、回数または時間数を必ず記録するようにしてください。記録することで見える化しますから、進捗状況が一目瞭然ですし、モチベーション維持に役立ちます。専用の記録表を作ったり、アプリに入力したり、カレンダーに書き込んだりなど様々な方法がありますが、記録=①自己分析のツール②モチベーションの原動力 と考えてください。
記録表Sample 1(絶対にものにしたい素材用)【Excel データ】
Reading Aloud Records Sample web
記録表Sample 2(通常用)
最後に:10回程度ではもにならない
数回や10回程度での音読でその素材はものになりません。とにかく回数を稼ぎましょう。