学習法

学習効果を5倍にする長期目標の設定【学習長期計画の立て方】

2020-04-17

この記事を書いている人:Okada (The NY Press, Inc.)
OKADA

目標設定をし, 逆算してプランを立てるのが学習でも音楽でも仕事でも, 目標設定が可能な分野であれば 成功のための基本だ, というのはもはや常識となっています。ノウハウが伝えられることがないために曖昧になってしまう部分ですが, 週や数ヶ月といった短期のみではなく, 半年〜年単位の長期目標を立てないのは学習効果を下げることになり, 非常にもったいないことです。

 

目標設定+書き留めるの効果

最新の研究によれば,

研究結果

目標設定をし書き留める(アプリなどに入力でもOK。毎日目に触れられればよいのです)と, そうでない人と比較して...達成度が5倍になる

と報告されています。今英語学習をしているのであれば, 常に目標設定をしましょう。達成度が5倍ということは, 学習効率/効果が5倍になるということです。また, 目標設定が継続の大敵であるモチベーションの維持に役立つことはあまりにも有名なことですね。

 

目標設定は短期の前に長期的に考える

数日〜1週間, 1ヶ月単位の短期目標設定は学生時代に立てた経験がある学習者の方は多いと思いますが, 年単位の長期目標はというと・・・という方が多いでしょう。以下「目標設定の具体的な手順」でポイントが理解できれば簡単に設定をすることができます。

PDCAサイクルの専門家が頻繁に例えるフルマラソンを例にあげてみます。42.195キロを自分の理想とするペースで走るためには, まずは最終目標【=長期目標】は当然42.195キロですよね。これが2キロまでの目標だけだと, 残りの40キロのランニングペースはとんでもないことになるのは想像がつくと思います。もちろん, 1.8キロくらいでその後の目標を立てるという戦略はあるでしょうが, 走りながらなので微調整までしなできないことがお分かりいただけると思います。全体の目標→中期→短期という設定が学習効果大なのです。

 

目標設定の具体的手順

以下のSTEPに沿って, 必ず書いて(orPC, タブレット, スマホなど端末などに入力)ください

書くというアウトプット作業をすることで脳内にある情報を体系的に整理することができます。そして, なんと言っても. ヴィジュアル化(=見える化)できるため, 視覚情報となり, より意識や目標が明確になります

 

 

設定の時期目安

最終目標 → 3年後 → 1年後 → 半年(=6ヶ月)後 → 3ヶ月後 → 1ヶ月後 → 1週後 → 1日単位

上記のように, 大きいところをざっと決めたら, 逆算して日々やるべきところまでさかのぼっていってください。スモールステップ【大きい目標を立てたら, 小目標に細分化する(仕組み:小目標に到達するごとに達成感を味わえる→ドーパミンが分泌→楽しくなる→また次の目標到達に向けて頑張りたくなる)】がモチベーション維持・学習効果UPの秘訣ですので, ざっと上記のような区切りがオススメです。

 

以下各項目の例は大学1年生(男性)をイメージしています。

step
1
最終目標の設定と英語が必要な理由を書き出す

① 最終目標:◯◯

・10年後, 外資系企業でネイティブスピーカーと対等に仕事をしている
・10年後, 海外で生活をしており, 市役所などの手続きが苦なくできている

② 英語が必要な理由:〇〇

・外資系でバリバリのために
・海外で生活ができないため
・子どもにも自分が教えたい
・外国人と結婚したい
・就職するのに必須
・TOEICのスコアが必要
・英語力が高いと給与が高くなる
・視野を広げたい
・世界中に友人を作りたい

 

 

step
2
3年後の目標設定

<大学4年次>
・TOEICスコアが900を超えている
・ゼミでは英語で自然にディスカッションができている
・英会話スクールは(現在のlower Intermediateから)Higher Advancedレベルクラスに在籍している
・国際交流イベントの司会は英語で可能である

 

 

step
3
1年後の目標設定


Step 2を達成するために, 1年後にどこまで達成すればよいのかを書き出します。

<大学2年次>
・(現在が600仮定して)TOEICスコアが750を超えている
・ネイティブスピーカーの先生の授業がほぼ理解できている・発言が求められたら3文以上(主張+理由2つ)で返せている
・フィリピンに留学している
・留学先で友人となら普通に英語でコミュニケーションがとれている
(国内ですでに会話できるレベルに仕上げておく)
・英会話スクールはまだ同じクラスレベルだが, 10分のDiscussion時間は途切れることなく複数の文を話せている
・国際交流イベントで初対面の人と普通に会話ができている

 

step
4
半年後(=6ヶ月後)の目標設定


Step 3を達成するために, 半年後(=6ヶ月後)にどこまで達成すればよいのかを書き出します。

<大学1年次>
・TOEICの全パートの解法は全て理解, 公式問題集は1冊が4周回せている
・英語のディスカッションクラスで, クラスメイトとの間でなら, 難しい話題でも3文以上(主張+例1つ+理由1つ)話せている
・留学の申込みをしている
・英会話スクールは当てられたときに2文以上で返せている・必ず自分から1つ質問をしている

 

 

step
5
3ヶ月後の目標設定


Step 4を達成するために, 3ヶ月後にどこまで達成すればよいのかを書き出します。

<大学1年次>
・TOEICの全パートの解法参考書は4周, 公式問題集は1冊が3周回せている
・英語のディスカッションクラスのクラスメイトとスキマ時間に15分間図書館前と学食で英語だけでしゃべっている
・英語のディスカッションクラスで, 英語が得意なクラスメイトと得意・簡単な話題なら対応に話せている
・留学経験のある先輩3人以上にZoomでアドバイスをもらっている
・英会話スクールは当てられたときに2文以上で返せている
・英会話スクールに話せるライバルができている
・国際交流イベントor大学の留学生会館で得た外国人友達と週に数回LINEをしている
・旅行に行っている(マレーシア)

 

step
6
1ヶ月後の目標設定


Step 5を達成するために, 1ヶ月後)にどこまで達成すればよいのかを書き出します。

<大学1年次>
・TOEICの全パートの解法参考書を2周, 公式問題集は1冊が1周
・英語のディスカッションクラスのクラスメイトとスキマ時間に10分間図書館の前で英語だけでしゃべっている
・留学相談会に行っている
・英会話スクールは週2ペース【=外国語学習の最低ペース】で通学し, 振替をせず固定曜日に行っている
・英会話スクールの飲み会に必ず出席し, 英語友達を作る・講師と英語で話している
・国際交流イベントに1人で参加している or 大学の留学生会館に行っている
・旅行(マレーシア)チケット申込み

 

 

step
7
今週の目標設定


Step 6を達成するために, 今週どこまで達成すればよいのかを書き出します。

・TOEICの解法参考書, 公式問題集を購入 → 解法参考書は1パート分
・合計6時間英語の勉強をする(そのうち音読やシャドーイングなど音声を伴う学習は2.5時間以上)
・留学についてウェブサイトで調べる
・英会話スクールでは待ち時間にクラスメイトに話しかけてみる
・行きたい国際交流イベントをリサーチする
・旅行(マレーシア)のリサーチ

 

step
8
1日単位の目標設定


Step 7を達成するために, 毎日何をすればよいのか(=何を達成すればよいのか)を書き出します。まずはStep 5の目標に到達できるよう3ヶ月間続けることを目標としましょう。いきなり年間となるとハードルが高いため, 失敗したときの精神的ダメージが大きいからです。ここは日々のTO-DOリストとは違いますので, これらは確実にできるようにし, それ以外に日々登場するTO-DOはその日のTO-DOに組み込んでいきましょう。

・1日1時間英語の勉強をする
… 音声系は35分以上
チャンク音読 と ラプソディーシャドーイングとコンテンツシャドーイングは必須
・Netflixで最低20分はドラマor映画の一部を観る
・英語ニュースサイトで1日1記事を読み, アウトプットのために日本語で簡単な要約を作成する
・朝35分早く起きて脳のゴールデンタイムを活用する(今7:00→明日から6:25)
・スキマ時間用のリスニング素材を用意し, 最低スキマ時間1つをリスニングにあてる

OKADA
ここはたくさん洗い出してもいいですが, やりたいことを1日全て詰め込むのは現実的ではないでしょう。特に, 5つやると決めて, 2つしかできないときは, 後悔・罪悪感・不甲斐なさといったマイナスの気持ちがあふれてきますよね。ですから, 最初はハードルを低く3つ程度に押さえておきましょう。その場合も,  最低値は決めておいてください。1つクリアできればよしとする, といったルールです。詳しくは行動習慣定着までの30日間に存在する3つの壁と対処法 記事を参照下さい。また, Step8や7は現在に近いためイメージがわきます。数や教材を含めるなど具体的に記述するよう心がけてください。

 

 

step
9
微調整


ここまで掘り下げると, 日々やるべきことや今後の道筋がかなり明確になります。実際に一度全体を体験してみないと分からないことのほうが多いですが, 格段に効率が増すでしょう。Step 8まで掘り下げると, 「あれやっぱり半年後はコレくらいが妥当だな」という調整が必要になる場合があります。細かい部分と全体を見比べながら微調整をしましょう。

例えば, もともと「英語のニュースをサラッと読めている」としていたけれどそれが現実的じゃない場合は, 「子ども向けの英語の漫画を1巻読めている」「英語の歌を一通り理解できた上で歌えている」「児童向けの洋書を1冊読めている」など微調整をしましょう。

 

 

Step 8 の項目は3ヶ月経った後に, 改めて追加・削除をするとよいでしょう。それに合わせて, その他のStepの修正が必要であればその際にしましょう。3ヶ月更新のイメージを持っておくとよいでしょう。また, 目安を最終目標の次を3年としていますが, 必要に応じて(大学卒業時期や転職時期など様々なイベントに合わせて)短縮したり, または, 6年後を追加したり, 最終目標が3年後なら, 2年後も設定したりと臨機応援にいきましょう。ただし, 一般的には最終目標は10〜3年後がデフォルトとされています。したがって, 3年後に最終目標がある場合もその先のさらなる目標を見つけて設定をしてみてください。遠くなればなるほど抽象的でぼやけてしまい設定が難しいですが, 例で示したように10年後まで考えてみると, 細分化する項目がより鮮明にイメージしやすくなります。また, 現在に近い時点(特にStep 8 と7)は, 数値や使用教材を書くなど, 具体的に書き出すことを忘れないように。これが学習効果をさらに高めてくれ, また, 常に長期的な視点で学習をすすめることができます。

 

 

書き方は「している」で

「〜したい」は願望ですが, 「〜している」は事実を示します。「〜している」という発想で書く時, 私たちの頭(=脳)はまるでそれが仮想空間の中で実現したかのような錯覚を起こします。これにより目標にたどりつくプロセスが最適化され, 効率が高まるとされています。学校の先生たちの間では, 目標シートを書かせるときはそのように指導をされている方は多いと思いますが, コレは教育業界の共通認識ですね。STEP 6までは全て「している」がオススメです。

 

やらざるを得ない環境を自分で作る

目標設定や細かな項目を書き出したら, 目標を宣言するのがオススメです。

① 書斎に掲示
② 家族に宣言
③ 友達に宣言
④ クラスメイトや先生 / 上司や部下
⑤ SNS

*概ね①→⑤の順で強制力が強くなります

 

【他者に宣言する場合の上級技術】
②〜⑤は他所を巻き込むパターンです。さらに上級者になると, この中から3タイプの人に宣言をします。
(1) 目標挫折を見られたくない人
(2) 目標挫折しそうなときに率直な意見をくれる人
(3) 常に応援してくれる人

こういうタイプ分けをすることでさらに強制力を働かせることができると言われています。

または, 海外旅行のチケット購入, 英会話スクール入会, TOEICの申込みを即する, 外国人友達とランチをする約束をする, 一緒に勉強しようと友だちを誘う などやらざるを得ない環境を作りましょう。迷っていないでやってみると分かりますが, こういう環境づくりってどれも本当にワクワクするような気持ちになります。モチベーションUPもできます。

 

目標や宣言内容は毎日見れるよう自動化

スマホアプリに目標設定しても, 結局そのアプリを開かない日があると, 薄れてしまいます。毎日触れることにより, 高いモチベーションが維持できる。その結果, 学習効果が高まる。したがって, 頑張らなくても毎日目に触れられる仕組みづくりが必要です。以下①は誰しも即実行できますね。④は私も実行しています。iPhoneで設定をしておけば, 毎日決まった時間にnotification(お知らせ)がきます。

① 書斎に掲示
② いつも必ず使うもののトップに貼り付け
 (例) 必ず使うファイルやノート, 手帳, あるいはトイレの壁など
③ 電子端末のトップ画面に写真(スマホ待ち受けなど)
④ リマインダー

とりあえず何がなんでも1ヶ月継続して目に触れるようにしてください。その理由詳細は以下です。

 

目標実現にむけての問題点も洗い出す

3年後の目標に到達するための問題点も洗い出しましょう。洗い出すことで早い段階で解決策を検討することができます。まずはブレインストーミングして, 問題点と解決策などを広げっていってみてください。

・留学費用が¥40万かかる
・TOEICの受験料 ¥6490 ✕ 3回 = 約¥20,000
・スキマ時間にディスカッションに付き合ってもらう友だちが3日坊主で続けてくれないかも
・人見知りなのに1人で国際交流イベントに行けるか
・週2ペースの英会話レッスンではアウトプット数が明らかに不足している

これらに対する解決策も自分なりに書き出してみるとよいでしょう。それが目標に到達するための障害を取り除く方法です。
・留学費用が¥40万かかる
→ 残り10ヶ月:バイト代を1ヶ月2万貯蓄 = 20万
残りの20万(奨学金:15万, 親:5万)
親の5万は返済期限を決めて, 留学後月単位で返す

・週2ペースの英会話レッスンではアウトプット数が明らかに不足している
→ DMM英会話(月¥6,000)で毎日25分アウトプットする

 

ちなみに,ブレインストーミングには手書きの他に, MindnodeのようなMindmap系アプリがオススメです。次のようなものがMindmapですね。

 

最後に(現実と理想のギャップ)

理想を叶えるためにはどの程度のギャップがあるのか, つまり, 現実と理想のギャップは把握しておきましょう。例えば, TOEICであれば, 900点を目標にする場合, 現時点で何点取れるかの把握は必須ですよね。ですから, まずは公式問題集を購入して同じ時間で解き何点とれるかをすぐに把握してください。点数だけではなく, 苦手な項目(PART), 例えば, ReadingはイケるがListeningがダメダメ, といったことも把握できますね。

Speaking 力の現実と理想のギャップ把握

音声を記録する!
… さらに負荷を書けたい場合は動画が有効です(レベルによってはかなり気落ちすると思いますが)。次の2つの録音がオススメです。
(1) 自己紹介
(2) モデルとなる音声がある教材・素材

(2)に関してはできるだけ自然なものを選んで下さい。自然と会話できるようになることが目的であれば, 教科書的な音声が収録された教材よりも, 音声の発する喉の位置や声のトーン, イントネーションなどが実用レベルに近い映画や海外ドラマのお気にいりの1~2文を抜粋して, 録音するのがオススメです。英会話スクールの教材音声でもよいでしょう。

 

 

全てのStepをこなすのに1時間以上はかかるのではないかと思います。人によっては数日。時間はかかりますが, ここは必要経費だと思って時間の投資をたっぷりしてください。

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